「夢じゃないわよ。
あの娘がデッキの柵を越えて海に飛び込むのを、
私、確かに見たもの・・・。」

「自分が見ていること、自分に見えているものとは、
一体どういうものなんだろうってね・・・。」

「見ていることと、見えているもの・・・・・?」

「私、もう少しゆっくり、考えたい・・・。

「これか、今日、部活も休みやし、
先生、家に行ってもええかな?」

「綺麗やなぁ!
久しぶりや、シャボン玉見るの!

「人というもんは、外見だけでは判断でけへん・・・。」
「それから、先生そのおっちゃんに言われたこと、
一生懸命考えたん。
私に何ができるのかなぁって。」
「種を蒔こうと思っているかな?」
「あれかとこれか・・・、あれかこれか・・・・・か。
自分たちの名前について、考えたことはあるか?」
「限りある命を、どう使うかっちゅうことや・・・。」
「なぁに、これ?」
「・・・庭の設計図。
「なに?クリスマスに父さんからもらった本じゃない」
「表紙についてる、このマーク!
「あっ!『種蒔く人』だ!」
「私、白い服の女の子とおっちゃんの話、書いてみようかな・・・・・。
やってもみないで、私にはできませんって言うのは、卑怯だもんね・・・。」
「父さん・・・、私、ずっと、母さんはもう居なくなっちゃったって
思ってたんだけど、そうじゃないんだね・・・・・。」
「種蒔き、始めようか」

「母さんの種は、ここね・・・」
「父さんは、写真を通じて、数えきれないくらい多くの人に
出会ってきて分かったことがある。
それはね、一人の人間として、やらなければならないと思う
ことを、黙々とやっている人が、この地球上には沢山いるって
ことなんだ・・・。」
「せっかく蒔いた種だ、芽が出るといいな・・・!」